<報告>8月10日まなびカフェ「日本人留学生がみたサウジアラビア」

2019年8月10日(土曜日)まなびカフェ
【ハラールカフェ vol.7】日本人留学生が見たサウジアラビア
ゲスト:ユースフ藤谷さん(マディーナ大学留学生)

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イスラムの国に住んでいた人間にとって、本家本元のサウジアラビアに関しては何かと興味があり、
また、犠牲祭というとても大事なお祝いの日の前日だったこともあり、
万障繰り合わせて参加させていただきました。
ユースフさんのちょっとした情報から、ほわんほわんほわんと自分のUAE体験を思い出しながら、
わくわく拝聴いたしました。
ユースフさんのお話に乗じて、ちょびっとUAEのご紹介もしながら、レポ致します。

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ハラールカフェ主催者であり、ご自身もサウジアラビアに一カ月留学経験がおありの
桂悠介さん(ユースフ桂さん)から、ざっくりとしたサウジアラビアのご紹介があり、
もうお一人のユースフさんにバトンタッチ。
お二人とも日本名がユウスケさんで、モスリム名を音感の似たユースフにされたとのこと。
日本人モスリム男性に、とても多い名前だそうです。(知らなかった!)

ユースフ藤谷さんは2014年にイスラム教徒になり、
2018年からジェッダのメディーナ大学に奨学生として入学。
いろいろな国からの学生が共同生活をする寮の様子が紹介されました。
学費や滞在費は無料でポケットマネーも提供され、写真のランチセットが60円。
食費は1日3食食べても150円という恵まれた条件!
湾岸らしい、肉とごはんデフォルトで、野菜が少ない、というのもあるあるで納得。
(でもそのホロホロのご飯と混ぜながら食べるお肉のガッツリ感がクセになるのよね~。って思いながら。)
そもそも草木が限られた地域の人の身体は、それで身体が維持できるように進化してきているのであって、
それがちょっと不安に思う藤谷さんの身体も、もしからしたらずっと住んでいたら適応できるのカモ?などと
妄想しながら聞いていました。(湾岸の人やラクダの睫毛が濃くて長いのは砂漠適応だと思うし。)


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左は伝統的ソウルフ―ドのカプサ。
このお皿は小さめですが、遠来の客人があったり犠牲祭などのお祭りの時には、
直径80センチ程の大皿に大量のピラフ様のご飯と羊の丸焼きが載せられ、大人数が車座になって囲み、
お皿の端に自分の陣地を決めて、ご飯とお肉やソースを混ぜて、手の平で握って食べます。
(インド式の食べ方は指の第一関節までで纏めて親指で口の中に押し出す感じですが、
アラブ式は、手の平全体を使います。)

インドのビリヤニ、サウジのカプサ、イエメンのマンディ、UAEではマチュブース、と
地理的影響による類似性を感じさせるお肉とご飯の組み合わせは毎日毎日これでもかと出て来る定番料理。
肉を煮たスープで炊くもの、肉を焼いて滴る汁を入れて炊くものなど、調理方法の地域性はあります。
いずれにしても、美味しくてムラムラと食べたくなってしまうソウルフ―ドです。
ジャポニカ種よりふわふわと軽いバスマティは、沢山食べてもお腹に重くないのがうれしい特徴です。
(結果はうれしくない湾岸化=体重増加ですが~。)

食に関して、日本食ではお寿司が人気だとご紹介がありました。
湾岸諸国では確かに白身で柔らかい熱帯魚のような魚が多いのですが、
陸地の人口や産業が少ないためか海が本当にきれいで汚染されていないため、
手軽に全く臭みの無い新鮮な魚がフィッシュマーケットやスーパーで安価に入手できるのが、
魚好きには嬉しい環境です。恵まれていますね。

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写真のように、寮のお部屋の紹介がありました。
インドネシアからの留学生さんとシェアされているそうです。
違った価値観や個性を尊重しながらアンジョウやっていく、というインクルーシブな社会の一員になる修行として、赤の他人さま、しかも違う文化圏の人と日常的に空間を共有することほど有効な事はないと思います。
結婚という同居体験以外に、こんな風に同じ学びを分かち合う異文化異個性の学友との共同生活が体験できることを、とても羨ましく思いました。学友の皆さん、ホントにいい笑顔ですね~。 

ジェッダ市の場合
夏⇒40℃~50℃/湿度10~25%
春/秋⇒22℃~28℃
冬⇒10℃~18℃
という気候とのこと。湿度の低さに驚きです。
(UAEでは気温は似たような感じですが、ピョンと突き出た半島ですので、湿度が80%になることもあり、正に灼熱地獄。サウジの方がやはりアッラーのお慈悲に近いのかしらと思いました。)
あまりに乾燥していて皮膚がバリバリ割れるので、保湿剤が必需品で、ニベアやワセリンが多用されると聞いて、
強い日差しの下ではサンテンオイルになって真っ黒にならないのかと老婆心。
あ、女性は外国人であってもアバヤ着用ですから、大丈夫ですね。)


藤谷さんのようにサウジに留学する人も居れば、
ジェッダの若者の中では欧米に留学する人が増えているそうで、
文化的に西洋化して男女間でハグで挨拶をすることもあると聞いて、いい意味で驚きました。
同様に海外留学をする学生が増加しているUAEでも、私自身はそんな光景は見たことが無かったからです。
学生同士でのコミュニケーションで英語が飛び交うこともあるということですから、
使用言語の文化背景で行動が影響を受けるのかもしれません。
(日本人でも英語で話す時に性格が変わる人って、いるいる~ですね。)
それが咎められない風潮になっているということが、とても新鮮に感じられました。

また、英語習得に偏重してアラビア語が疎かになっている人も居る、
というのもUAEと共通で興味深いことです。
UAEは幼稚園から大学院までどこまでも教育は無償ですが、英語教育を最重要として
年間200万円も学費のかかる私学のインターナショナルスクールに子供を通わせる家庭も増えています。
そういった子達は英語では読み書きできても、アラビア語の読み書きがイマイチという子もいて、
実は親も悩んでいます。
将来の仕事は殆どが公務員ですし、サウジでもUAEでも大家族と親戚縁者の付き合いが
生活の大きな部分を占める環境ですから、ちゃんとしたアラビア語能力は当たり前に必須です。
こういった新人種がどうやってサバイバルしていくのか、興味深い課題だと思います。


また、日本に関しても、グローバル化の荒波の中での視界が欧米諸国に偏重している
日本の現状についての問題提議がありました。
全く同感であり、幸福感の薄い日本に必要なのは、アラブ地域の信仰文化風習の影響の伝播ではないかと常々思っています。

アッラーの教えである分かち合い、助け合い。家族や親戚縁者との時間の共有を大事にすること。
ハグし合ってキスしあう触れ合いある人間関係。
誰かが失敗しても悪口を言わず許しあう寛容さ。
どれもが人間としての幸福感に繋がる要素ではないでしょうか。


最後に、イスラムの信仰についてのメッセージがありました。
コーランにはこのように記されているそうです。

 人を殺した者、地上で悪を働いたという理由もなく人を殺す者は、全人類を殺したのと同じである。  
 人の生命を救う者は、全人類の生命を救ったのと同じである。[5:32]

このように明確に記されていても間違いを犯す人間が必ず居るのは、
法律やルールを尊守すべき日本にも世界にもどこにでも居るのであって、
イスラム教をテロと安易に結びつけず、もっと信仰に対する理解を深めて欲しいという切実な思いが伝わってきました。
そのためには、政治的、商業的な繋がりだけでなく、これからはもっと草の根の交流を通してお互いの文化や宗教を尊重しあい成長して行けるようになってほしいと締めくくられました。


藤谷さんは今でジェッダ在住1年。
これから更に5年間のサウジアラビア留学を終えられる時には、どれだけの体験と学びを持って
帰国されるのかと楽しみになります。
違いがあればあるほど、その理由を考察する過程で学ぶことができるという意味では、
価値観も習慣も日本と真逆に思われる湾岸諸国で得られる気づきや学びはとてつもなく大きいのではないかと思います。

また、ボーンモスリム(生まれながらモスリム)ではなく、
個人の自由意志で選択としてイスラムに入信された藤谷さんや桂さんのような方々が
イスラム社会と日本社会のブリッジとなって下さることは、
双方にとって理解が深まりやすく本当に素晴らしいことだと思います。

最後になりますが、自分の中では相手を理解するということはおいそれとできることではなく、
寛容さを持って違いをそのまま受容することがレスペクトの在り方だと、
諦めもあって納得して来たのですが、藤谷さんの「もっと理解を!」というメッセージがガツンと突き刺さり、また努力をしてみようかという想いを新たにさせて頂きました。次回の帰国時にもプレゼンしてくださるとのこと。
ココロより楽しみにしています。シュクラン!


文・まなびカフェブロガー Tamaさん

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http://raipinews.seesaa.net/article/455139195.html
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2019年8月24日(土曜日)午後2時から3時半
【書家の華雪さんにまなぶ!】書のワークッショップ
テーマ:「食」の文字

わたしたちにとって食事はたいせつな時間であるように、漢字が生まれた古代中国でもまた、
食事はたいせつな時間でした。ひとびとは何を食べ、食にまつわることばを、
どんなかたちの文字として表したのでしょう?
美味しいを表す意外な字など、食にまつわる字を書きます。
書家としての作品制作だけでなく、エッセイ執筆やワークショップなど
多岐にわたり活躍するゲストを迎えての特別講座。

場所:らいとぴあ21 1階展示コーナー
参加費:1,000円(小学生以下100円)
※前半の座学のみの参加は無料です。
後半の定員:10名(お申込み先着順)


◆らいとぴあ21「まなびカフェ」とは?
世の中のいろいろや最近ちょっと気になることを、少人数制でアットホームにまなび、考える「まなびカフェ」。各回の素敵なゲストの話を聞いて、みんなでわいわい意見をかわすといつも見ている世界が少し違って見えるかもしれません。普段は逢えないいろんな人、いろんな世界をのぞくことで、インターネットやテレビ、新聞などでは味わえない生きた”まなび”を楽しむ場です。スケジュールや各回詳細はまなびカフェイベントページ(Facebook)や、らいとぴあ21のブログに掲載のチラシPDFデータをご覧ください。

◆これまでのまなびカフェのレポートなどはこちら(らいとぴあ21ブログ)
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