2019年1月26日(土曜日)13:00~16:00 まなびカフェ
仏師が教える彫刻ワークショップ
ゲスト:真野明日人さん(仏像彫刻師)
仏師が教える彫刻ワークショップ
ゲスト:真野明日人さん(仏像彫刻師)
《心の断捨離》
雪のちらつく今日1月26日。
時間に遅れるかと焦る気持ちに小走りで会場のドアの向こうへ。
真野明日人さんによる「仏師が教える彫刻ワークショップ」は既に始まっていた。
子供達の数が思いの外多かったのだが、実際、其処に集まっていたのは大人でも子供でもない、
真剣に目の前の板に向かっている 「魂」達だった。

棚の上に並んでいる今日の主役の板を一枚手に取る。
それは声を発さない。そっと心と耳を寄せてみる。
「あなたは何を生んでくれますか」
私の手の中の「無」の板は、永平寺の山門の前で私の目を捉えて離さなかった
ハスの花を浮かび上がらせてくれた。
鉛筆は板の上を走り夏の日の美しい花の輪郭を描く。
ピカピカに磨かれた彫刻刀を一本手に取り、檜の板に一刀を入れた。
昔々、指の絆創膏に血が滲むのを気にしながら美術の時間に板を彫っていた自分を思い出した。
作業が思い通りにならず、早く止めたくてひたすらチャイムを待っていた。
そんな思い出は私の口元を緩めていたに違いない。

花の輪郭を薄く薄く彫っていく。深く彫る勇気なんぞ無い。
チマチマ黒の線をなぞる。
見抜かれた。
講師の真野さんが私の板を手に取られ、黒の線を深くえぐっていかれた。
「破壊しました。これくらい深く彫りましょう。」 と仰る。
大きなヒントも下さったのだが、私の手に戻った板から鉛筆で描いた花の姿が消えていた。
ここからどうやって花を戻したらいいのだろう。
板を見た。
もう一度心を寄せる。
するとあの夏の日、お寺の中に吹いてハスの花びらを揺らした風を思い出した。
ハスの花に近づき、気づいた香りを思い出した。
見えない下絵が見えた。
花の姿を見た。
「破壊しました」
そうなのだ。
無になるだけではないのだ。
板という概念を外し、その中に心を映すには一旦自分の意識を破壊しなくてはならないのだ。
今日、手に彫刻刀を持ち、板と対峙し、自分自身を解放してみようと思った。
頭で考えるのではなく、心に想いを馳せてみよう。
檜にあの時のハスが現れた。
私の心にハスが現れた。
破壊という作業は 新しい何かを産む。
それは心の断捨離のような気がした。
板の余白を彫る。
これでもか、と彫っていく。
彫ってみると、稚拙な迷いが見えてくる。
ここも要らない。深く彫る。
浮かび上がるのはあの時に目で見た花では無く、今私の胸の中に残っている永平寺での想い全てである。
ふと思う。
私は破壊するものがたくさんある。
これから楽に生きていく為に。
ふと気づくと4時になっていた。
気持ちが洗濯をされたように気持ち良くなっていた。
真野さんにはきっと山のように出る木屑の数だけ言葉をお持ちなのだと思う。
でも必要な言葉を必要なだけ話される。
今日も私達が使った彫刻刀をピカピカに磨かれるのだろう。
またお会いして教えて頂きたいことがある。
その為に、ハスの花びら一枚を板の中に埋もれたままにして次のワークショップを楽しみに待つことにした。
文・まなびカフェブロガー マリリンさん
◆各ブロガーさんのプロフィールはこちら
http://raipinews.seesaa.net/article/455139195.html
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2019年2月1日(金曜日)18:30~20:00
「ひつじがお肉になるまで in モンゴル」
モンゴルで撮ってきた写真や動画を中心に、ひつじがお肉になるまでの過程や遊牧地域や都市部で行われている屠畜方法を紹介します。
異なる文化圏の人々の考え方を通じて、食べる事について一緒に考えませんか?
場所:らいとぴあ21 1階展示コーナー
ゲスト:野本悠紀子さん(大阪大学大学院言語文化研究科 言語社会専攻 博士前期課程2年)
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◆らいとぴあ21「まなびカフェ」とは?
世の中のいろいろや最近ちょっと気になることを、少人数制でアットホームにまなび、考える「まなびカフェ」。
各回の素敵なゲストの話を聞いて、みんなでわいわい意見をかわすといつも見ている世界が少し違って見えるかもしれません。普段は逢えないいろんな人、いろんな世界をのぞくことで、インターネットやテレビ、新聞などでは味わえない生きた”まなび”を楽しむ場です。スケジュールや各回詳細はまなびカフェイベントページ(Facebook)や、らいとぴあ21のブログに掲載のチラシPDFデータをご覧ください。
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http://raipinews.seesaa.net/category/23991971-1.html
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