講師に来てくださったのは、書家として活躍する華雪さん。1時間半の講座で、前半45分は文字の始まりについて、後半45分は実際に文字を書いてみました。
文字の始まりは、伝説上の人物である蒼頡(そうけつ)が、動物の足跡を見てその動物を連想できることを発見し、文字を思いつきました。そして、例えば牛の角を描いた形で「牛」など、どんどん文字をつくっていきました。後にたくさんの人々が蒼頡の肖像画が描かれましたが、その顔には必ず4つの眼が描かれていました。それは、観察力が高いことを表しているそうです。昔の人々の世界観に憧れます。
時が流れ、「殷」の王朝で気象や農業、その他あらゆるものを占う際に漢字が使われました。神のお告げを亀の甲羅に文字として刻みました。それで甲骨文字が生まれたのです。その時の亀の甲羅のレプリカを見せていただきました。甲羅はおなかの部分で平たく、すべすべでした。その甲羅にある亀裂を見て王が神のお告げを読み取るのだそうです。王だから読み取れるのか、読み取れる人が王になれるのか。後者かなー。
この日のメインテーマは『「数」と文字〈一・二・三〉』。
「一」は細い木(算木)を並べた形で「二」も「三」も同じ要領で、算木を増やしていき「数」を表しています。
「一」は「壹」とも書きます。この「壹」は、壺に蓋をした様子を表していて、完全に充足していることを意味しています。転じて、「一」は「すべてそこにある」ことを意味しています。
「二」の場合は「貳(弍)」。契約の際に”鼎(てい)(古代中国で使用されていた鍋)”に”戈(ほこ)(刀)”で契約を彫り付け、同じものをもう一つつくりました。そこから「ふたつ」、また「うらぎる・うたがう」という意味になったそうです。
「三」は「參」。先祖を参る際(參と呼ばれる儀式)、三つのかんざしを挿していました。この三本のかんざしの玉が長い髪の上で光っている様子から、「三」の意味を表すようになりました。
最後に「一二三」と並べて書く。これは理屈では届かない境地を表しています。一の次は二、二の次は三、理由がなくとも必ずこう続きます。なぜかしら。
そして後半45分。いよいよ筆を使って字を書きます!!
「一の漢字の成り立ちは、細い枝なので、細い枝をイメージしてそれをそのまま文字にするようにして書いてみてください」との華雪さんの説明に、わくわくしました。
華雪さんが用意してくださったたくさんの筆を、好きなように使って、各々が思うが儘に書いていきました。筆は、山羊、イタチ、リス、猿、鳥の羽、他にもわらや竹などたくさんの種類があり、私は、猪の筆と、竹の筆を使って「壹」を書きました。殷の時代には書き順なんてないものですから、「壹」の蓋からでも壺からでも好きなところから書いていいのです。猪の筆は、細くて柔らかくスマートな「壹」書けました。でも、満たされた感じが足りないので、竹の筆に変えたところ、意外と筆は柔らかくて、堂々とした「壹」が書けました。筆を変えることや、イメージの違いで、字の雰囲気なんかが変わってくるのです。もう一種の芸術といってもいいでしょう。
華雪さんもおっしゃっていましたが、書き順ができて速くきれいに書くことが求められている現代ですが、昔はただ意味が分かればよかったのです。私はこれをきっかけに速くなくても、きれいでなくとも、その漢字の意味がその文字に表れているような文字を書いていきたいです。
華雪さんの講座は、あと3回続きます。