らいとぴあ21の2018年初めのセミナーは、おとなりの国「韓国」をテーマに3回連続形式で開催しました。
韓国について、一面的な情報でとどまらず、先進的なとりくみから積極的に学ぼう!と企画した今回のセミナー。一般的にはあまり知られていない韓国のアレコレを、それぞれ違った側面から学ぶことができました。
第1回目
「アジアの中の韓国と日本:コミュニティ組織化と地域福祉の現在」穂坂光彦さん
「福祉とまちづくりの融合が求められる政策の推進」朴兪美さん
第1回目は、日本福祉大学の穂坂光彦さん、朴兪美さんにご登場いただき、住民主導型で進める地域福祉のありかたについて、それぞれのアプローチからお話しいただきました。
まず穂坂さんからは、アジアの貧困地域での住民組織づくりの経緯―権力闘争のなかで社会矛盾を解決する手段として形成されたことについて説明がなされ、そうした流れに沿って派生したソウルの住民運動(貧困地域での開発・撤去反対闘争、および生活共同体の自主再建活動)についての紹介がありました。また、ソウルで制度化されるまちづくり施策について、計画ありきのアプローチになりかねないことに危惧しつつも、住民と制度をつなぐ「中間的社会空間」の創造が期待されることを、現場からの声もひろいながらお話しいただきました。
第1回目
「アジアの中の韓国と日本:コミュニティ組織化と地域福祉の現在」穂坂光彦さん
「福祉とまちづくりの融合が求められる政策の推進」朴兪美さん
第1回目は、日本福祉大学の穂坂光彦さん、朴兪美さんにご登場いただき、住民主導型で進める地域福祉のありかたについて、それぞれのアプローチからお話しいただきました。
まず穂坂さんからは、アジアの貧困地域での住民組織づくりの経緯―権力闘争のなかで社会矛盾を解決する手段として形成されたことについて説明がなされ、そうした流れに沿って派生したソウルの住民運動(貧困地域での開発・撤去反対闘争、および生活共同体の自主再建活動)についての紹介がありました。また、ソウルで制度化されるまちづくり施策について、計画ありきのアプローチになりかねないことに危惧しつつも、住民と制度をつなぐ「中間的社会空間」の創造が期待されることを、現場からの声もひろいながらお話しいただきました。
つづく朴さんからは、現在ソウルで展開する福祉政策―地域住民の主導性を重視した「マウル(村、地域)志向の福祉政策」について、社会福祉館や洞住民センターでの事例を通して解説いただきました。マウル志向の福祉施策とは、従来型の専門職主体の福祉ではなく地域住民主導の共同体を重視したコミュニティ志向の施策で、考え方としてはまさに地域福祉の推進に他ならないと言えます。洞住民センターで進められている「訪ねていく洞住民センター」事業は、センターの職員が地域にでていくアウトリーチ施策のことですが、相談員といった専門職員だけでなく事務職員も(!)地域に出向くことが求められているそうです。(らいとぴあ21スタッフのモットー「だれもがコミュニティワーカー」「だれもが相談員」の考え方とも親近感を覚えます。)
こういった地域への訪問型アプローチ・・まず地域に出向き、住民と出会うことから始め、住民の動きに対応しながら変化していく福祉のあり方が、韓国で言われる福祉理論「福祉生態系」ではないかと、お二人の解説から読み取ることができました。こうした動きは日本でも、厚労省が提言する「『我が事・丸ごと』地域共生社会」などで住民主導型の福祉をどう構築するかが問われていますが、韓国の現場で実践される動きや、あわせて朴さんから紹介された高松市での事例などは、これからおおいに参考になると思われました。
こういった地域への訪問型アプローチ・・まず地域に出向き、住民と出会うことから始め、住民の動きに対応しながら変化していく福祉のあり方が、韓国で言われる福祉理論「福祉生態系」ではないかと、お二人の解説から読み取ることができました。こうした動きは日本でも、厚労省が提言する「『我が事・丸ごと』地域共生社会」などで住民主導型の福祉をどう構築するかが問われていますが、韓国の現場で実践される動きや、あわせて朴さんから紹介された高松市での事例などは、これからおおいに参考になると思われました。
第2回「在日コリアンのまなざしから見る韓国」金光敏さん
第2回は、コリアNGOセンターの金光敏さんが登場。朝鮮半島にまつわるさまざまな事項について、穴あきプリントに沿いながら学び、理解を深める濃密な時間となりました。
ていねいな解説を聞きながら、朝鮮半島の地理や歴史について学んでいくと、ふだん見落としがちな日本との関係性のことがしだいとひもとかれていきます。特に在日コリアンの社会的に不利な状況が、戦後のどさくさ?で作為的につくられていたという経緯には、こんにちにおかれる処々の問題も思い起こされ、根深い課題であることに気づかされました。
最近の報道で頻繁にとりあげられる慰安婦問題の日韓合意については「合意をくつがえすという話をしているわけではありません。もし広島と長崎の原爆被害にアメリカから多額の賠償金が支払われたとしても『原爆のことを語ってはいけない』ということにはならないはず。慰安婦問題も、両国の政治間の問題に矮小化させるのではではなく『女性の権利を守る』という、もっと普遍的な問題」としてとらえ、韓国によるベトナム戦慰安婦の慰霊塔建設を例に、過去に向き合う姿勢のあり方について投げかけられました。
あいかわらず日本と韓国とのあいだに良好なようすは見られませんが、国家間の関係にほんろうされず、それらを超えた相互理解は市民レベルで積み重ねられることができる―そう改めて思う学びとなりました。
第3回「ソウルで実践される『住民主体のまちづくり』」桔川純子さん
最後となった第3回では「NPO希望の種」副理事長の桔川純子さんより、市民活動家出身の朴元淳ソウル市長がかかげるまちづくり施策について解説いただきました。
ソウルで打ち出される「マウル共同体」事業では、住民による主体的なまちづくり活動をあとおしするための施策が実施されているそうですが、少人数から始められる、時間をかけて何度でもやりなおしできるなど、だれでも活動に参画できるように制度がつくられているそうです。そういった施策をもとに、ソウルではさまざまなユニークな活動が繰り広げられているようです。
なかでも若者たちの居場所として紹介された「青春ビルディング」は、区長選挙でアクションを起こした若者たちが逆に区長からプランを求められて実現した事業で、官民のガバナンスが成熟しているようすがうかがえました。ほかにも工具図書館、分かち合いの米びつなど、これならご近所さん同士でできるかも?と思えるような、ちょっとしたアイデアが形になっている事例が多くみられ、活動に参加する敷居の低さが感じられました。
「住民主体のまちづくりはすぐには成されない」という考えのもと、持続可能な制度設計を敷き、住民主体のまちづくりを推進するソウルの政策。しかしこうした政策も、以前からソウルのコミュニティで培われていた住民活動がリサーチされ、それら住民主導型のまちづくりを活かす手法として構築されてきたとのこと。そう考えると、私たちの住む日本でも、まずは地域から自分たちの暮らしづくりを考え始めてもいいのかも?と思われました。
以上3回を思い返してみても、韓国から学べることは、これからもまだまだたくさんありそうだ、もっと学びたい、と改めて思います。くわえて、格差や生活困窮など日本と共通する課題もかいま見られ、学ぶだけでなく、課題解決にむけて知見を分かち合い、ともに未来をつくっていくことも可能ではないかと感じられました。
このセミナーを機会に、これからもおたがいが行ったり来たり(왔다 갔다・ワッタガッタ)しながら、ともに学びあう関係を広げ、深められればと思います。