らいとぴあ夜間学校『台所でできる火山の実験』 6/27

6/27(土)「らいとぴあ夜間学校」大学部レポート

◉2限『台所でできる火山の実験』 
講師:佐伯和人先生(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻准教授)
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らいとぴあ夜間学校、大学部の第4回は「台所でできる火山の実験」。
昨年度の夜間学校で「今夜から月の見え方が変わる話」という授業を担当された、大阪大学のマグマ大好き佐伯和人先生が再び登壇!少しスリルのある実験も交えながら、マグマや火山の噴火の仕組みについて楽しく学んできました。大人も子供もかぶりつきで楽しんでいましたよ!

【実験その①】は常温のサイダーを使って火山爆発の仕組みを解説。
火山爆発はサイダーが吹きこぼれるのと同じ仕組み。
サイダーを普通に開けると泡がたくさん出ます。
吹きこぼれないようにするにはキャップをゆっくり静かに少しずつ開けていけば泡は大して出ません。
みなさんもやったことがあるのではないでしょうか。サイダーが吹きこぼれるのはボトルの中の気圧と外の気圧に差があるから。
ボトルの中は3気圧、外は1気圧。キャップを開ける速度が速いほど気圧の変化が速く起こり、結果泡がたくさん発生します。
この仕組みは火山爆発と同じで、地下にあるマグマ溜まりに何らかの刺激が加えられると圧力の変化が起こりマグマが発泡します。仕上げにお山の蓋がポンッと開けば火山噴火になるのです。
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【実験その②】はマグマが上がってくる仕組み。
この実験は目にも楽しく、とてもきれいでした。
マグマは陸のプレートの下に沈み込んだ海のプレートの作用によって、マントルの一部が溶けだしたもの。これに浮力がついてマグマ溜まりに上がっていきます。このマグマが上がってくる様子を食紅で色をつけたお酢をマグマに見立てて再現しました。

透明なカップの一番下に着色したお酢、その上に地殻に見立てたサラダ油を入れて、重曹と水飴で作った発泡剤を入れます。これでマグマが発泡した状態を作ると…発泡により浮力を得たマグマ(お酢)が地殻(サラダ油)の中をポコポコ上がっていきます!
重さが釣り合っていた地殻とマグマが、泡の浮力で吹き上がっていくのです。
この実験は見た目も鮮やかなので是非家でもやってみたいのですが、サラダ油の後始末が大変です。

【実験その③】はゼリーを使ったマグマの通り道の再現。
マグマが地中を通ってくる時、その通り道はどんな形になっているのか。実験前はトンネルのようになるのかな…と思っていました。

まず、2つに切ったペットボトルのキャップがついている方にゼリーを作ります。
ゼリーは100均でも売っている混ぜて作るタイプです。色はできるだけ薄い方がおススメ。冷蔵庫で冷やすとき、2つに切ったペットボトルのお尻の方を受け皿にすると倒れません。

カチカチに固まったゼリーを地殻に見立て、食紅で色付けした水をスポイトで注入すると…ゼリー(地殻)の中に赤がぶわっと広がりました! その形は…板状!
まるでゼリーの中に薄いフィルムを差し込んだよう。マグマが地殻を通るとトンネルではなく面のようになるとは驚きでした。
この「マグマの通り道」は貫入岩という岩石で実際に見ることができます。貫入岩は箕面の滝道にもあるそうなので、探してみてください。
実験後にゼリーを美味しくいただきたい方は、食紅水の代わりにイチゴシロップでもいいそうです。

【最後の実験】は部屋が大参事になる危険性から先生は躊躇っていましたが、やってくれました。
その名も「ミニ火山大噴火!」。

500mlのペットボトルのキャップに3㎜程度の穴を開け、ボトルに重曹大さじ1、クエン酸大さじ1、中性洗剤少々を入れておきます。そこにボトルの半分くらいの水を入れたら素早くフタ!
すると、一気に泡が発生し、キャップの穴からプシューっと吹き上がりました。
天井が濡れないようにスタッフさんが傘を準備して待機していましたが、傘の出番はなく…。こんなものか…と肩透かしをくらった気分でいたらまだ終わりませんでした。

次に同じものを準備して、今度は穴を開けたキャップの裏に練った薄力粉を詰めてフタをします。水を入れて、キャップを閉めると…行き場をなくした泡がボトルの中でどんどん増えていくのがわかります!
キャップの裏に詰めた薄力粉が泡の力に圧されて穴からうねうね出てきたーと思ったら…ブッシュー  今度は天井に届くほど吹き上がりました!傘大活躍!
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これを火山に例えると、1回目のペットボトルは常に火口が開いている火山。まあまあの爆発力です。
2回目の練り物つきペットボトルは火口が閉じている火山。発泡して高まった圧力の逃げ場がないため、爆発力が増して大噴火に。
1980年に起きたアメリカにあるセントへレンズ火山の大噴火では、噴火することがわかっていたにもかかわらず、予測を越えた大噴火により57名が亡くなったそうです。

爆発力を持った火山の危険性がよくわかる実験でした。この実験はヘタをすると爆発したペットボトルで怪我をすることもあるので、先生からも注意がありましたが「何が危険なのか理解している大人」と一緒にやってくださいね。

私自身ひっさしぶりの実験だったのですがとても楽しめました。最近ニュースでもよく耳にするようになった火山についても理解が深まった気がします。
印象に残ったのは「実験が危険なのではなく無知が危険」という先生の言葉。
大人が危ないからと止めても、今はインターネットで簡単に実験動画が見られます。むしろ子どもの方が情報を得るのは早くて行動に移すのも早い。
なら、何が危ないのかを理解して大人も一緒にやるのがいい…という先生のお話に、危ないことほどワクワクした子どもの頃を思い出してなるほどなぁと思いました。
佐伯先生も所属しておられる日本火山学会のホームページには子ども向けの実験マニュアルも紹介されているので、ぜひ覗いてみてください。

(レポート:受講生モト)