らいとぴあ夜間学校『ニホンザルの社会に学ぶ』2/3

2/3(火)「らいとぴあ夜間学校」レポート

◉2限(大学部)『ニホンザルの社会に学ぶ』 
講師:山田一憲先生(大阪大学)

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らいとぴあ夜間学校大学部、第5回は「ニホンザルの社会に学ぶ」。人間科学部の先生がなぜニホンザルの研究を?と不思議に思いましたが、そこにはサルを研究することで見えてくるヒトという動物の姿がありました。
 
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 先生が見せてくれた一枚のスライド。そこには6頭のサルが写っていました。「これを見て気づいたことはありますか?」と受講生に聞いていきますが「毛の色が違う」「顔の赤みが違う」…それくらいしかわかりません。しかし先生はサルを見ると名前がわかると言います。みんな似たような顔なのに?実はサルには一頭一頭名前がついていて、どこの群れのサルか・いつ生まれたか・オスかメスか・出産の経験はあるのかといったことが分かるようになっています。これを個体識別といって家系表も作れるようになっています。箕面のサルにもちゃんと名前があるそうです。

 次に先生が見せてくれたのはサルの毛づくろいの様子。サルが毛づくろいをするとき何かをつまんで口に運ぶという仕草を見たことがあると思います。あれはサルジラミという寄生虫の卵を取って食べているのです!サルジラミは血を吸ったり病気を媒介したりするのでサルにとっては健康を害するものです。だから自分で取れない頭や体の外側を毛づくろいで取ってもらうのです。そうしてシラミを取ってもらう換わりに良いエサ場に近づくチャンスをあげたり、喧嘩のときに助っ人になったり、母サルの場合は大事な赤ちゃんを触らせてあげたりする。人が貨幣で利益を交換するように、サルも毛づくろいという貨幣で利益を交換していたのです。これがヒトが行う社会的交換の起源になったのではと言われています。

でもヒトは自分に見返りがなくても、ボランティアなど「人のための行動」をしますよね。しかしサルはけがをしたサルや困っているサルを何の利益も無いのに助けるということはしません。授業の最後に以前インドで感電したサルを仲間のサルが助けたというニュースの動画を見ましたが、確かに倒れたサルに噛みついたり転がしたり、水に浸けたりして蘇生を試みているように見えました。しかし研究者から見ると、あれは攻撃か「なんだこいつ」という興味から来る探索を含む遊びの延長のようです。すごいのは仲間を助けたサルではなくて「サルが仲間を助けた」とサルを称賛するヒトのほうなのです。

「困っている人を助ける」「相手の立場で考える」「見返りがなくても行動する」。ヒトが不思議にも思わないこれらの行動が、サルを研究することで他の動物にはない「ヒトの特殊性」だということが見えてくるなんて驚きでした。結局ヒトは他の種を研究することでヒトとは何かを知りたがっている生き物なんじゃないだろうか…と思いましたが、こんなことを考えるのもヒトの特殊性なのでしょうか…。

(レポート:受講生モト)

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