セミナーは二部構成で、前半は福島県で子ども達の保養活動に関わる吉野裕之さん(子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク)より、放射能に苦しむ福島の現状や保養活動についてお話を聞きました。

大阪で暮らしていると、放射線量のことを気にするなんてほとんどありません。何マイクロシーベルトとか言われてもぴんと来ない、というのが正直なところでした。
しかし、福島市の放射線量は大阪の約10倍。また、除染が進んでいるとはいえ、通学路や公園などでは局所的にきわめて高い放射線量が測定されています。放射能が身体に及ぼす影響を考えると、未成熟な子どもたちを外で遊ばせるにはかなり危険な状態です。
にもかかわらず「福島は危ない」と評されることを恐れてか、子どもたちへのマスク指導はほとんどされておらず、最近では運動会も運動場で開催されているのだとか。
だからといって「外出しない」という選択をしたら、子どもたちはからだをおもいっきり動かす機会がなく、そのためおなかがすかずに食事量が減り、幼児の成長のさまたげになっているそうです。小学生は小学生で、運動不足のため肥満が顕著に。日々の生活が乱れ、無気力な子も増えているのだそうです。
こうした現状を聞くと、これまでは放射線量という測定された(でも目に見えない)数値であらわされていた福島の問題が、子どもの生活状況などで課題が顕在化しはじめていると言えるのではないでしょうか。
被差別など不安定な状況が要因となり新たな課題が現れる現象は、すでに多くの先例で示されています。福島の問題も、今後は一元的な話ではなく、多方面での支援が必要となってくるのではないかと思わされました。
後半では、この3月萱野地域にて福島県郡山市の親子を受け入れした取り組み「大福プロジェクト」の実行委員長・中嶋治子さん(通称ぷうさん)、事務局で当館職員の中村雄介が登場。取り組み報告のあと、吉野さんを交え、「大阪」=迎える側と、「福島」=送り出す側と、それぞれの立場から意見交換しました。
「受け入れは喜んでもらえたけど、しんどい福島の現状をまのあたりに見せられ、つらい思いになった」というぷうさんの感想に対して、吉野さんから「つぎに何かあったときに甘えてもいいかな、と思える場所があるのが嬉しいこと」と、今だけでない、これからも関係がつづいていく大切さが語られます。
大福プロジェクトの取り組みも、単に保養プログラムとしてではなく「地域交流」として取り組んでいるのが重要ポイントで、地域のおっちゃん、おばちゃんたちも交えて福島のみなさんを歓迎(交流会はお祭りさながら!広場で盛大に行ったり)するなど、地域ぐるみでの受入がこのプロジェクトのミソです。
また地域課題の面でも、被差別部落としての歴史をもつ地域が、これまで課題解決に向けて取り組んできた活動の数々は、今後の福島での取り組みのヒントになるやもしれず、その意味でも取り組みを続けていくのはとても重要なことです。
会場からも、大福プロジェクト副実行委員長・K兄が「この取り組みは一回だけではなく、これからも続けていくもの」と、力強く宣言!
また、被災者支援の政策(子ども被災者支援法)の、今後の展望についての質問には、吉野さんより「今後の政策には『被災者の声を反映させる』としています。大福プロジェクトのような取り組みがどんどん行われ、それに参加した被災者から『こんないい取り組みがあって、いい人たちに出会えた』といった声が出され、政策につながり、取り組みが増えていくことを期待したい」というような話がされました。
これまでの地域ぐるみでの活動が、遠いと思っていた福島県とつながり、地域交流が広がっていく・・
そんな夢想が実感できた対話でした。
大阪と福島、これからも手をつなぎあっていきましょう~
参考**
セミナーで吉野さんが紹介されていたサイトです。
保養実施の情報投稿と、保養情報の検索が可能で、双方をつなぎます。
ほよーん相談会
http://hoyou.isshin.cc/
吉野さんが活動する団体のサイトです。
子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
http://kodomozenkoku.com/
大福プロジェクトを実施した「ボランティアグループきずな」のサイトです。
http://blog.goo.ne.jp/kizuna2011